鼻について
鼻は、「呼吸器」として呼吸の際に空気が通る機能や、「嗅覚」として匂いを感知する機能の他にも、空気中に漂うホコリやウイルスをろ過する「フィルター」機能、肺や気管を保護する「加湿・加温」機能などがあります。鼻は大きく分けて鼻腔(びくう)と副鼻腔(ふくびくう)の2つの部分から成ります。鼻の病気で現れる症状には、鼻水、鼻づまり、悪臭、悪臭を放つ鼻水、嗅覚の喪失(嗅覚障害)などがあります。
よくある鼻の症状
- くしゃみ
- 鼻水(鼻水がとまらない・鼻水が粘っこい・黄色っぽい)
- 鼻血
- 鼻づまり(鼻閉)
- 鼻声
- 鼻の痛み(鼻の奥が痛い)
- 鼻水が喉の方に垂れる(後鼻漏)
- 鼻のかゆみ
- 鼻が臭い・鼻水が臭い
- においがわからない(嗅覚障害)
など
鼻の病気
急性鼻炎
いわゆる「鼻風邪」で、主にライノウイルスやコロナウイルス(旧型)などのウイルス感染により、鼻粘膜に急性炎症が起こります。急性鼻炎の症状は、鼻水(サラサラから粘り気のある状態へ、さらに緑っぽい色へと変化)、くしゃみ、鼻づまり、鼻の痛み、発熱などがあります。急性鼻炎は通常2週間以内に治りますが、緑がかった鼻水が2週間以上続く場合は副鼻腔炎の兆候とも考えられますので、早めに受診することをお勧めします。
治療は、鼻炎を抑える点鼻薬や内服薬などの対症療法、外来治療、ネブライザー治療(細かい霧状にした薬剤を鼻粘膜に直接当て、炎症を和らげる治療)が中心となります。緑がかった鼻水が続くなど、細菌感染が疑われる場合は、抗生物質の処方も検討します。
慢性鼻炎
慢性鼻炎は、鼻粘膜の炎症が慢性化することで起こる鼻炎です。主な慢性鼻炎の種類としては、血管運動性鼻炎、乾性鼻炎、老人性鼻炎、妊娠性鼻炎、薬剤性鼻炎などがあります。慢性鼻炎の症状としては、鼻水、鼻づまり、頭重感、嗅覚異常、後鼻漏(鼻水が喉に垂れる)、痰、咳などがあります。原因は様々あり、中には正確な原因が分からないものもあります。
鼻炎の種類によって治療法も様々ですが、通常は内服薬や点鼻薬による薬物療法が第一段階となります。これで効果がない場合には手術も考慮します。その際は、連携医療機関にて手術をお受けいただけます。
アレルギー性鼻炎・季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
アレルギー性鼻炎は、サラサラと水っぽい透明の鼻水、くしゃみ、鼻づまりなどの症状を引き起こします。場合によっては、目(痒み)や喉(イガイガするなど)にも症状が現れることがあります。花粉やダニ(ハウスダスト)などのアレルゲン(抗原)が鼻から体内に入り、異物を排除しようとするアレルギー反応(抗原抗体反応)として症状が現れます。アレルギー性鼻炎は、症状が1年中現れる通年性と、花粉症のように特定の季節のみに症状が現れる季節性に大別されます。アレルギー性鼻炎は、自覚症状と客観的所見を基に総合的に診断しますが、原因(アレルゲン)を特定するには血液検査が適しているとされています。
治療は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの不快な症状を抑える薬物療法が中心で、鼻づまりがひどい場合にはレーザー療法も並行して行われることがあります。
急性副鼻腔炎
症状が現れてから4週間以内に起こる副鼻腔炎です。白や黄色の粘り気のある鼻水や、鼻づまりなどの風邪に似た症状に加え、鼻や頬、額などの痛み(頭痛として感じられることもあります)、発熱、悪臭、嗅覚障害(匂いが感じられない)、後鼻漏(鼻水が喉に垂れてくる)、鼻づまりによるいびきなどの症状が現れることもあります。
治療には通常2週間~1ヶ月ほどかかり、内服薬やネブライザー治療などの薬物療法で改善が期待できます。しかし、治療を怠ると症状が持続したり、慢性副鼻腔炎に進行したりするため、注意が必要です。
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
3ヶ月以上にわたって症状が続く副鼻腔炎です。慢性副鼻腔炎の症状としては、黄色く粘り気のある鼻水、鼻づまりの慢性化、嗅覚異常、後鼻漏(鼻水が喉に垂れてくる)、頭重感などがあります。風邪やアレルギー性鼻炎による急性副鼻腔炎を繰り返すことも要因となり、体質や生活環境なども発症に関係します。
治療は「少量長期マクロライド投与療法」という、少量の抗生物質を2~3ヶ月間服用する治療が中心で、ネブライザー療法も併用します。ただし、鼻茸が大きい場合や数が多い場合は内視鏡手術が必要になります。なお、手術が必要な場合は、連携医療機関を紹介いたします。
好酸球性副鼻腔炎
近年増加傾向にある慢性副鼻腔炎の一種です。好酸球性副鼻腔炎では、鼻の中に鼻茸が複数できる特徴があり、再発を繰り返しやすい病気です。主な症状は慢性副鼻腔炎と似ており、黄色く粘り気のある鼻水、鼻づまり、嗅覚障害、後鼻漏(鼻水が喉に垂れてくる)、頭痛、眉毛や頬の痛みなどがあります。喉の痛みや難聴を伴う場合もあります。明確な原因はまだ解明されていませんが、20歳以上で気管支喘息やアスピリン不耐症のある方に多く、国から「特定難病」に指定されています。
症状が軽い場合は、薬による対症療法が基本となりますが、鼻茸が大きくなり日常生活に影響する場合には内視鏡手術を行います。その場合は、連携医療機関を紹介いたします。鼻茸は手術で取り除いても再発しやすい傾向があるため、薬物療法と手術を組み合わせることで、患者様の生活の質(QOL)の向上に努めます。また、新薬も登場し、手術をせずに症状を上手に抑えることも可能になっています。
鼻中隔弯曲症
鼻腔(鼻の穴)は鼻中隔という軟骨と骨でできた鼻の壁によって左右の鼻の穴に分けられています。この鼻中隔が曲がったり、鼻の穴の中に突き出たりしている病気が鼻中隔弯曲症です。鼻中隔弯曲症は、鼻づまりなどのさまざまな症状を引き起こします。弯曲の程度には個人差があり、S字状、C字状、棘状など様々な種類があります。80~90%の成人は、鼻中隔が曲がっているといわれていますので、弯曲自体は決して珍しくありません。弯曲の程度が強く、日常生活に支障をきたす症状がある場合には治療が必要になり、「鼻中隔弯曲症」と診断されます。症状としては、鼻づまり、鼻づまりによる頭痛、鼻血、いびきなどがあります。また、睡眠時無呼吸症候群や副鼻腔炎、滲出性中耳炎などを誘発することもあります。
鼻中隔弯曲症の症状は、骨や軟骨の構造的な問題が原因のため、完治には手術が必要です。なお、手術が必要な場合は、連携医療機関を紹介いたします。
嗅覚障害
嗅覚障害の症状には、匂いを感じにくい、あるいは全く感じられないなどがあります。これらの症状は、匂いが伝わる経路が障害されることで起こります。数種類の匂いを嗅ぐ「基準嗅覚検査」によって、障害の度合いを評価します。
嗅覚障害の原因となっている病気があれば、まずそれを治療する必要があります。しかし、適切な治療を行っても、嗅覚が戻らない場合も多いです。さらに近年では、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、慢性的な嗅覚障害の治療が注目されています。嗅覚に異変を感じた場合は、お早めに当院までご相談ください。