良性発作性頭位めまい症とは
めまいの中でも最も一般的なもので、内耳の障害によって起こるめまいの一種です。比較的すぐに(数秒~数10秒以内)回復するのが特徴です。
良性発作性頭位めまい症の症状
主な症状には、頭を急に動かしたときに起こる「ぐるぐる」回る感じ(回転性めまい)があります。例えば、寝返りを打ったとき、横になっていた状態から起き上がったとき、急に振り返ったとき、シャワーやうがいをする際、急に上を向いたときなどなどにめまいを感じることがあります。また、フワフワと浮遊感のあるめまいや、それに吐き気を伴うこともあります。めまいは通常、数秒~数10秒で治まります(場合によっては10分以上続くこともあります)。頭を動かさずじっとしていると、めまいも治まります。聴覚症状(難聴や耳鳴りなど)は通常なく、頭や他の脳神経にも異常は起こりません。
良性発作性頭位めまい症の原因
耳は外耳、中耳、内耳の3つの構造で成り立っています。良性発作性頭位めまい症は、主に内耳が傷害されることで起こります。内耳にある耳石が前庭器官から剥がれ、何かの拍子に半規管内に入ることがあります。頭が動くと、体の回転による加速度や重力の影響で、耳石が半規管内を移動します。これにより、半規管内のリンパ液の流れが変化し、実際には頭が動いていないにもかかわらず、脳に内耳が動いているという信号が送られます。そして内耳からの信号と、目や筋肉からの情報が一致しなくなったときにめまいが起こります。
誘因
耳石が剥がれる理由は、まだ十分に解明されていません。原因不明の症例が全体の半数を占めるという報告もあります。
しかし、以下のことが引き金になる可能性があると考えられています。
- 長時間同じ姿勢で頭を動かさない方(デスクワーク、手仕事など)
- 手術後などにより、長時間寝たきりの方
- 閉経後の女性の方
- 骨粗しょう症の方
- 交通事故後など頭に衝撃が加わったあと
- 突発性難聴の後遺症
良性発作性頭位めまい症の検査・診断
まず、めまいを診断するために、詳しく問診を行います。問診では、めまいがいつ起こるのか、どのくらいの時間続くのか、どのようにして治まるのか、他に症状はないかなどをお聞きします。次に、鼓膜の様子から中耳炎がないかなどを調べます。その後、フレンツェル眼鏡という特殊な眼鏡と赤外線CCDカメラを使って、眼振検査(眼球の動きを観察する)を行います。良性発作性頭位めまい症では、頭を動かすとめまいが起こるので、異常がある時に頭がどの位置にあるかを調べます。また、聴力検査によるメニエール病や突発性難聴との鑑別も必要になります。
良性発作性頭位めまい症の治療
症状を緩和する薬物療法(抗めまい薬、抗不安薬、吐き気止め、循環改善薬など)と平衡訓練(めまいリハビリテーション)による治療を行います。それでも効果が見られない場合は頭位治療などを検討します。
頭位治療(浮遊耳石置換法)
三半規管内に入ってしまった耳石を耳石器に戻すために、患者様の頭部と体を動かす治療法です。耳石の位置は、フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラを用いて眼振(眼球の動き)を確認することで特定します。最も多い後半規管の耳石に対してはエプリー法がよく知られていますが、水平三半規管に対してはレンパート法などもあります。三半規管から耳石を排出できれば症状は改善します。良性発作性頭位めまい症の約70%はこの治療で改善し、1週間以内に症状が消えるケースもあります。ただし、頭位治療は症状が重い方、強い吐き気のある方、頸椎や腰に病気のある方には行いません。また、めまいの種類によっては、この治療が有効でない場合もあります。
良性発作性頭位めまい症の予後
1~2ヶ月で自然に症状が軽快し消失します。予後は比較的良好ですが、1/4~1/2の症例では再発することもあります。
めまい発作時の対処法
多くの場合、良性発作性頭位めまい症は数日のうちに自然に改善します。しかし、症状が強い場合や翌日まで症状が続く場合は、別の病気である可能性もありますので、当院までご相談ください。
注意点と予防策
日常生活では以下の点にご注意ください。
適度に頭を動かす
良性発作性頭位めまい症と診断されたら、必要以上にめまいを恐れて頭を動かさないでいるよりも、できるだけ多方向に頭を動かす方が望ましいでしょう。ただし、転倒、転落には十分に注意してください。頭部への衝撃はなるべく避けたほうが良いですが、長時間同じ姿勢でいることは避け、適度に頭を動かしましょう。
規則正しい生活
日常生活のサイクルが乱れると、自律神経のバランスが崩れてしまうので、日頃から規則正しい生活を送ることが大切です。
同じ方向で横向きに寝ない
(寝返りを行う)
いつも同じ向きで寝ていると、耳の内側にある三半規管に耳石が移動し、影響を与えやすくなります。就寝中には寝返りを打つのが望ましいので、寝る前に枕の上で2~3回寝返りを打ったり、寝る前に頭を左右に振ったりすることをお勧めします。また、寝ているときと同じ姿勢でテレビなどを見続けないようにしましょう。
頭の位置を高くして寝る
頭部を少し高くして寝ると、耳石が三半規管に入りづらくなります。枕を高くしたり、上半身を少し起こして傾斜をつけたりしても同じ効果が得られます。
めまいに対して
神経質になりすぎない
ぐるぐる回るめまいは改善しても、しばらくはふらつきが残ることがあります。あまり気にしすぎず、リラックスして治療を続けることが大切です。100点満点を目指さず、80点くらいで日常生活を送れることを目標にしましょう。