血管腫とは
血管腫とは、血管層の内側の血管内皮が異常増殖する病気です。血管腫の主な種類は以下となります。
いちご状血管腫
(乳児血管腫)
いちご状血管腫とは、血管内皮が異常増殖を起こすことで皮膚の表面がいちごのように赤く腫れ上がる血管腫です。大きさには個人差がありますが、中には10cm以上の場合もあります。一般的に生後数週間〜3ヶ月の乳児に見られ、生後1年ほどまで増殖を続けたのち、7歳ごろまでに自然に消失していきます。発症率は約1%で、決して珍しい病気ではありません。
いちご状血管腫の影響
上記の通り、いちご状血管腫は7歳ごろまでに自然消失しますが、症状が現れた場所によっては後遺症を残す恐れがあります。目の血管に生じるとまぶたを上手に開けなくなることで視力が低下したり、首の血管に生じると食道を圧迫して食べ物を飲み込む運動に障害が起きる恐れがあります。
そのため、気になる場所にいちご状血管腫が現れた際には、早期治療を行うことが重要です。
老人性血管腫
老人性血管腫とは、加齢とともに徐々に症状が現れる血管腫です。名前から高齢者の病気と認識されやすいですが、20歳代から発症する恐れがあります。血管腫の大きさは数mm程度で、見た目はほくろのような形状をしています。そのため、見逃されてしまうケースもあり、注意が必要です。
血管奇形について
血管奇形とは、血管内皮の異常増殖ではなく血管そのものに異常が起きることで血管腫と類似した症状を引き起こす病気です。厳密には別の病気ですが、病態が血管腫と似ていることから、両者は学術的には明確に区別されていません。
単純性血管腫
(毛細血管奇形)
単純性血管腫(毛細血管奇形)とは、生まれつき毛細血管に異常がある先天性の血管腫です。主な症状はいちご状血管腫とは異なり、初期の段階では赤く平坦なあざのような形状として現れ、時間の経過とともに徐々にサイズが大きくなったり色が濃くなります。放置しても自然消失することがないため、皮膚科による治療が必要です。
単純性血管腫の影響
単純性血管腫の治療では、主にレーザー治療が適用されます。治療は何歳からでも可能ですが、時間が経過すればするほど根治までに時間を要するため、できるだけ早い段階で治療を行うことを推奨しています。
最も適した治療時期は、赤ちゃんの段階です。赤ちゃんは肌が薄く柔らかいために治療の際の痛みや副作用も少なく、短期間で治療を終えることができます。
静脈奇形(海綿状血管腫)
静脈奇形(海綿状血管腫)とは、生まれつき静脈が海綿状もしくは袋状に拡張する先天性の血管腫です。全身のあらゆる場所に発症しますが、特に脳内に発症するケースが多く見られます。
脳内で発症した場合には自覚症状に乏しいために気づかないことが多く、別の病気でMRI検査を行った際などに偶然発見されることもあります。特に自覚症状がない場合には放置しても問題ありませんが、病状が悪化している場合やてんかん発作、出血などの症状が現れている場合には、治療を行う必要があります。
また、身体に発症した場合には、皮膚の表面が青紫色に変色して凹凸を伴うなどの症状が現れることがあります。この場合も、病状が悪化している場合には治療が必要です。
静脈奇形の影響
静脈奇形の中には、時間の経過とともに徐々に成長してサイズが大きくなることがあります。この状態で長期間放置すると、患部が変形したり周囲の組織を圧迫したりして様々な障害を引き起こす恐れがあります。
大脳に発生した静脈奇形が成長した場合には、てんかん発作や麻痺を引き起こす恐れがあります。また、小脳の場合では、発話障害やバランス感覚の低下などを招く恐れがあります。脳幹の場合では、顔面麻痺やものが二重に見えるなどの視力障害を起こす恐れがあります。
脳以外の場所で特に注意が必要なのが指の静脈奇形です。指の静脈奇形が成長すると指の形状が変形して日常生活に多くの障害を引き起こします。
いずれにせよ、静脈奇形が成長している場合には、できるだけ早く医療機関を受診して適切な治療を行うことが重要です。
動静脈奇形
動静脈奇形とは、本来は毛細血管によって繋がっている動脈と静脈が直接繋がって一体化している先天性の病気です。動脈と静脈が一体化すると、正常な血管よりも血管壁が薄くなる特徴があります。そのため、ちょっとした外部刺激で血管が破裂する恐れがあり、注意が必要です。
特に、脳内で動静脈奇形を発症すると、その後脳内出血を起こして命の危険を伴うこともあります。実際に若年層の脳内出血の原因の多くは動静脈奇形であるという報告もあるため、早急に治療を行うことが重要です。
また、身体で動静脈奇形を発症すると、皮膚が赤っぽく隆起するなどの症状が現れます。初期の段階では自覚症状に乏しいことが多いですが、放置すると痛みを伴ったり潰瘍を形成する恐れがあるため、できるだけ早い段階で治療を行う必要があります。
動静脈奇形の影響
脳内で動静脈奇形を発症すると、少しの外部刺激で脳内出血を引き起こす恐れがあります。実際に、脳内の動静脈奇形の患者様の2〜4%はその後脳内出血を起こしているという報告もあります。また、脳内出血は一度起こすとその後何度も再発する危険があります。そのため、早急に専門の医療機関で治療を行うことが重要です。
血管腫の治療
レーザー治療
血管腫の治療は、現在ではレーザー治療で行うのが一般的です。従来は血管腫がある程度成長した段階で治療を開始するのが一般的でしたが、現在ではレーザー治療の普及により初期の段階の血管腫でも治療を行うことが可能となっています。
レーザー治療は少々痛みを伴うため、治療の際には患部に麻酔クリームを塗布して行います。また、血管腫のサイズが大きい場合には、レーザー治療とともに内服治療を合わせて行うこともあります。
なお、目周辺の血管腫の治療を行う際には、痛みによって顔を動かしてしまってレーザーが目に当たってしまう危険を回避するため、全身麻酔を行うこともあります。
ほとんどの血管腫の治療は当院で対応可能ですが、より専門性の高い治療が必要と判断した場合には、当院と連携する高度医療機関を紹介いたします。
なお当院では、Vビームを導入しております。
Vビームについて
Vビームとは
Vビームとは厚生労働省が認可した色素レーザーで、様々な血管病変の治療に使用されている医療機器です。Vビームは血液中のヘモグロビンに作用して血管を破壊することができるため、血管が異常増殖を起こしたり、血管が肥大・拡張している場合などに有効な治療法です。
当院ではVビーム2という機種を使用して様々な血管腫の治療を行っております。治療は主に保険適用となりますが、単純性血管腫、乳児血管腫、毛細血管拡張症以外の治療に対してVビーム2を使用する場合は自費診療となりますので、あらかじめご了承ください。
Vビームで対応できる症状
- 小鼻の赤み
- 赤ら顔、酒さ(しゅさ)
- 毛細血管拡張症
- 老人性血管腫(赤ほくろ)
- ニキビ跡の赤み
- ケロイド、傷跡
- 静脈湖
- 赤あざ(単純性血管腫、乳児血管腫)
Vビームのダウンタウン
以下は、Vビームを使用した治療での、各項目のダウンタイムの詳細です。
赤み、むくみ
治療後に赤みやむくみなどの症状を伴うことがありますが、ほとんどの場合、赤みは数時間ほどで、むくみは2~5日ほどで治まります。
内出血
赤ら顔の治療では、照射出力を下げて顔全体に照射するため、内出血はほとんど起こりません。また、老人性血管腫や毛細血管拡張症、静脈湖の治療ではパルス幅を広げて太い血管のみに照射するため、こちらも内出血はほとんど起こりません。
一方、単純性血管腫の治療では、過剰な血管を破壊するために照射出力を上げてパルス幅も絞ります。そのため、治療後に一時的な内出血を起こすことがあります。また、中には患部が色素沈着を起こすこともありますが、多くの場合は3ヶ月ほどで自然消失します。
副作用・注意事項等
禁忌
- 現在妊娠中の方にはVビームの治療は推奨しておりません。
- 過去に金の糸治療を受けた場合はVビームを行うことはできません。
副作用
- 赤み、むくみ、水疱、内出血、色素沈着、色素脱失など
注意事項等
- 治療当日は、飲酒や激しい運動はお控えください。
- マッサージや強い摩擦を伴う運動は1週間ほどお控えください。
- 普段の外出程度であれば過度に紫外線を避ける必要はありませんが、長時間直射日光にさらされると患部が色素沈着を起こす恐れがあります。そのため、色素沈着が気になる場合には、外出時に日焼け止めクリームを塗布したり帽子をかぶるなどの対策を行ってください。
- 入浴は普段通り行うことはできますが、湯船の温度はぬるめに設定するようにしましょう。
- メイクやスキンケアは治療後から可能ですが、赤みや痛みを伴う場合には患部を避けて行うようにしてください。
- まれに患部がかさぶたになる場合がありますが、その際にはかさぶたが取れてからメイクを行うようにしましょう。
- 治療後に一時的に赤みやむくみなどの症状を伴うことがありますが、ほとんどの場合は赤みは数時間ほどで、むくみは2~5日ほどで治まります。
- 症状によっては治療後に一時的に内出血を起こすことがありますが、ほとんどの場合は3~6ヶ月ほどで治まります。
- 症状によっては治療後に一時的に色素沈着を起こすことがありますが、ほとんどの場合は3~6ヶ月ほどで治まります。
- ごく稀に患部に水疱が発生することがあります。その際にはできるだけ早めに当院までご相談ください。
料金
単純性血管腫といちご状血管腫(乳児血管腫)の治療の場合には、保険が適用されます。また毛細血管拡張症の治療の場合には、保険適用できるケースとできないケースがありますので、診察時に医師が判断して事前にお伝えします。
保険診療
当院では、都内在住で高校生までのお子さまに対しては全額保険が適用されるため、自己負担は0円で治療を受けることが可能です。
保険診療 | 料金(税込) |
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初診料 | 約900円 |
再診料 | 約400円 |
Vビーム | 約6,500円~ 32,000円 |
Vビームによる治療は、照射範囲によって以下のように料金が変動します。あらかじめご了承ください。
自費診療
以下の場合は、保険適用外となるため自費診療となります。あらかじめご了承ください。
Vビーム | |
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全顔 | |
頬 | |
頬から下 | |
鼻 | |
老人性血管腫 5か所まで | |
傷跡やケロイド 1か所 | |
ウイルス性イボ 1か所 | |
静脈湖 1か所 |
薬物治療
サイズの大きい血管腫の場合や、レーザーが届かない深部の血管腫を治療する場合には、レーザー治療と併用して内服治療を行うことがあります。当院では、血管腫の内服治療の際にはヘマンジオルシロップ®という2016年に保険適用となった内服薬を使用します。ただし、ヘマンジオルシロップ®は本来心臓疾患の治療薬であるため、血圧低下や心拍数の変化などの副作用を引き起こす恐れがあります。そのため、ヘマンジオルシロップ®を使用する際には事前に詳細な検査を行う他、治療後には小児科医と連携して経過観察を行う必要があるため、一時的に入院されることを推奨しています。
なお、入院が必要な場合は提携の医療機関を紹介いたします。
硬化療法
硬化療法とは、血管に硬化剤という特殊な薬剤を注入して血管内皮細胞を潰していく治療法です。主にレーザーが届かないほど深部に血管腫が生じている場合や、副作用の危険性から内服薬による治療が不可能な場合、後述の手術治療を円滑に行うために事前に血管腫のサイズを小さくする場合などに行われます。
ただし、硬化療法は注射が困難な場所に血管腫が生じている場合には行うことができませんので、可能かどうかは担当医が事前の検査等で判断いたします。
手術
上記の治療法では十分な改善効果が見られなかった場合や、上記の治療を行うことができない事情がある場合には、手術治療が検討されます。
手術治療では、血管腫が生じている部分とその周辺皮膚を同時に切除します。切除範囲が小さい場合には皮膚を縫合して終了となりますが、範囲が広い場合には他の皮膚を移植する必要があります。なお、皮膚移植が必要かどうかは担当医が事前に判断し、必要と判断した場合には当院と連携する高度医療機関をご紹介いたします。
お子さまのあざが
気になる際は
当院へご相談ください
お子さまのあざには様々なケースがありますが、最も多く見られる原因はいちご状血管腫です。一般的にいちご状血管腫は7歳ごろまでに自然消失しますが、早期に治療した方が患者様の負担を軽減させることができるため、できるだけ早めに当院までご相談ください。
また、いちご状血管腫以外のあざに関しても、現在ではレーザー治療によってきれいに改善させることが可能です。
お子さまのあざは、本人だけでなくご両親も気になると思います。当院では、お子さまのあざにお悩みのご両親のお力に添えるよう、様々な治療法をご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください。